本日取り上げるテーマは、
because が表わす「理由」の3つの種類です。
「なぜ?」に答えることばとして、because は中学で最初に出会う接続詞のひとつです。
ところが、次の2つの文を並べてみると、少し不思議なことが起こります。
① He came back because he loved her.
(彼は戻ってきた。彼女を愛していたからだ)
② He loved her, because he came back.
(彼は彼女を愛していたのだ。戻ってきたのだから)
①では、「愛していた」ことが「戻ってきた」という出来事を引き起こしています。
では、②はどうでしょうか。
「戻ってきた」ことが「愛していた」気持ちを生んだ ── わけでは、もちろんありません。
「戻ってきた」という事実は、話し手が「彼は愛していたのだ」と 判断した根拠 なのです。
同じ because で結ばれていながら、
①と②では、因果の矢印が逆を向いている。
RINbecause が結ぶ「理由」には、いくつかの層がある。
今回は、その種類を読み解いていきましょう。
・because が理由づけているもの、その3つの違いとは何か?
・同じ文が正反対の意味になってしまう、コンマひとつのはたらき
・3つの型を、その場で見分ける方法
では、いきましょう!
because の語源 -「by + cause」
3つの型を見ていく前に、because ということばの成り立ちを確認しておきましょう。
ここに、すべての出発点があります。
because = by(〜によって)+ cause(原因)
そのままです。
because とは、もともと 「その原因によって」 という2語の句だったのですね。
📜 語源を覗いてみると
cause のルーツは、ラテン語の causa(カウサ)=「原因・理由・訴訟の争点」にあります。
causa(ラテン語:原因・理由)
↓
cause(古フランス語 → 英語:原因)
↓
bi cause(中英語:その原因によって)
↓
because(英語:〜だから)
かつては because that と、接続詞 that を伴う形も使われていました。
「その原因によって、すなわち〜ということによって」── ずいぶん重たい形だったわけですね。
その that が落ち、bi cause が1語に固まって、いまの because が生まれました。
ここで注目したいのは、because が語源のうえで 「原因によって」 としか言っていない、という点です。
because は、「何の原因なのか」までは
指定していない。
出来事が起きた原因なのか。
話し手がそう判断した原因なのか。
それとも、話し手がいまそれを口にした原因なのか。
この 「空白」 があったからこそ、because は3つの層へと広がっていくことになります。
これから見ていく3つの型は、そのまま 3つの「なぜ」 に対応しています。
🔵 なぜ、そうなったのか ── 出来事の理由
🟠 なぜ、そう言えるのか ── 判断の根拠
🟣 なぜ、それを言うのか ── 発話の理由



この3つを、順番に
見ていきましょう。
第1の型 ── 出来事の理由を述べるbecause
もっとも基本的で、学校でも最初に習うのがこの型です。
現実の世界で、ある出来事が別の出来事を引き起こした ── その因果関係を述べます。
🔵 The ground is wet because it rained last night.
(昨夜雨が降ったので、地面が濡れている)
🔵 She went home early because she had a headache.
(頭痛がしたので、彼女は早く帰った)
🔵 The flight was cancelled because a typhoon was approaching.
(台風が近づいていたので、その便は欠航になった)
1つめの文で起きていることを、図にしてみます。
雨が降った ──→ 地面が濡れた
結ばれているのは、世界の中の出来事どうし。
話し手がその場にいようがいまいが、この因果関係は成り立ちます。
この型には、はっきりした特徴があります。
because節が、Why …? への答えとしてそのまま使える ということです。
Why is the ground wet?
── Because it rained last night. ✅
「単独で Why …? に答えられる」。
この性質は、あとで3つの型を見分けるときの 重要な手がかり になります。
覚えておいてください。
第2の型 ── 判断の根拠を示すbecause
では、先ほどの文の 前後をそっくり入れ替えてみましょう。
使う語は、ほとんど同じです。
🟠 It rained last night, because the ground is wet.
(昨夜、雨が降ったんだね。地面が濡れているのだから)
言うまでもなく、地面が濡れたから雨が降ったのではありません。
そんな因果関係は、この世界に存在しないからです。
では、この because は何を理由づけているのでしょうか。
地面が濡れている ──→ 「雨が降った」と私は判断する
結ばれているのは、出来事どうしではなく、
根拠と、話し手の判断。
つまり、because節が理由づけているのは 「雨が降ったこと」ではなく、「私がそう結論したこと」 なのですね。
因果の舞台が、世界の中から 話し手の頭の中 へと移っている。
実例を並べてみます。
🟠 She must be out, because her car isn’t in the driveway.
(彼女は出かけているにちがいない。車がないのだから)
🟠 He can’t be home, because nobody’s answering the phone.
(彼が家にいるはずはない。誰も電話に出ないのだから)
🟠 You must be tired, because you’ve been up since five.
(疲れているでしょう。5時から起きているのだから)
お気づきでしょうか。
この型では、主節に must や can’t といった 「〜にちがいない/〜のはずがない」 を表わす助動詞が、非常に現れやすくなります。
主節が 「話し手の判断」 を表わしているからこそ、
because節がその 判断の根拠 を差し出せる。
日本語に訳すときは、「〜のだから」「〜ということは」 を当てると、この層の感触がうまく出ます。
「〜ので」と訳してしまうと、第1の型との違いが消えてしまうので注意したいところですね。
🔍 見分けのヒント:Why …? に答えられるか
第1の型は、Why …? への答えとして成立しました。
では第2の型は、どうでしょうか。
Why did it rain last night?
── Because the ground is wet. ❌
成立しません。
「なぜ雨が降ったのか」という 出来事の原因 を尋ねられているのに、「地面が濡れているから」では答えになっていないからです。
第2の型が答えているのは、「なぜ、あなたはそう言えるのか」── つまり How do you know? のほうなのですね。
第3の型 ── 判断の動機を明かすbecause
3つめは、少し意外な型かもしれません。
まずは実例をご覧ください。
🟣 What are you doing tonight? Because there’s a good movie on.
(今夜、何か予定ある? というのも、いい映画がやっているんだ)
この because は、何の理由を述べているのでしょうか。
ひとつずつ、消していきましょう。
「いい映画がやっている」ことが、相手の今夜の予定を決めたわけではありません。
→ 第1の型では、ない。
「いい映画がやっている」ことから、相手の予定を推測したわけでもありません。
→ 第2の型でも、ない。
残るのは、ひとつです。
いい映画がやっている ──→ だから私はいま、この質問をしている
理由づけられているのは、文の内容ではなく、
その発話を行なった、という行為そのもの。
「なぜ、そうなったのか」でも「なぜ、そう言えるのか」でもなく、
「なぜ、私はいまこれを言うのか」 ── その動機を明かしているわけですね。
この型は、疑問文や命令文のあとに、とてもよく現れます。
🟣 Are you hungry? Because there’s some pizza in the fridge.
(お腹すいてる? 冷蔵庫にピザがあるんだけど)
🟣 Call me when you land, because I’ll be worried.
(着いたら電話して。心配だから、こうお願いしているんだ)
🟣 Don’t ask him about work today. Because he’s had a rough week.
(今日は仕事の話をしないで。というのも、彼はつらい一週間だったから)
訳としては、「というのも〜だから」「〜なので聞くんだけど」 がぴたりと当てはまります。
なお、3例目のように、実際の会話では 文をいったん切ってから Because が単独で始まることも珍しくありません。
文の外側から添えられている型なので、こうした独立した現れ方ができるのですね。



3つの型が出そろいました。
ここからは、見分け方の話に入ります。
because のコンマ ── ひとつで意味が正反対になる
ここまで見てきた違いは、意味だけの問題ではありません。
文の構造そのものに、はっきりと現れます。
鍵になるのは、because節が 文の「中」にあるか、「外」にあるか です。
🔵 第1の型 → 文の中に 組み込まれる(コンマなしも可)
🟠🟣 第2・第3の型 → 文の外に 添えられる(コンマ・ポーズが必要)
なぜ、第2・第3の型はコンマを必要とするのか。
理由は単純です。
「話し手の判断」も「発話という行為」も、文が述べている内容の一部ではないから。
内容の外側にあるものは、文の外側に置くしかないのですね。
そして、この「中か外か」の違いが、次の有名な例文の 両義性 を生みます。
He didn’t marry her because she was rich.
この一文には、正反対と言っていいほど異なる2つの読みがあります。
ポイントは、not が、どこまで届いているか です。
🔵 コンマなし ── because節は文の「中」
He didn’t marry her because she was rich.
→ not が because節まで届く
→ 彼が結婚したのは、彼女が金持ちだったからではない。
(= 結婚は、している)
🟠 コンマあり ── because節は文の「外」
He didn’t marry her, because she was rich.
→ not は because節まで届かない
→ 彼女が金持ちだったので、彼は結婚しなかった。
(= 結婚は、していない)
結婚したのか、しなかったのか。
その決定的な違いを分けているのは、コンマひとつ ── 言い換えれば、because節が not の届く範囲に入っているかどうか だけなのです。
文に 組み込まれた because節は、否定に呑み込まれる。
文に 添えられた because節は、否定の 外側に立つ。
ちなみに、これは書きことばだけの話ではありません。
話しことばでは、コンマの代わりに 一拍おく ことで、同じ区別がなされています。
同じ性質は、強調構文にも現れます。
🔵 It was because she was rich that he married her. ✅
(彼が結婚したのは、彼女が金持ちだったからだ)
🟠 It is because the ground is wet that it rained. ❌
強調構文の焦点に置けるのは、文の「中」にある because節だけ。
迷ったときの判定法として、そのまま使えます。
🔍 since や as とは、どう違う?
「〜だから」を表わす接続詞には、because のほかに since や as もあります。
この2語は、because とくらべて 「文の外に添えられる」型に大きく偏る という特徴を持っています。
Why did he leave?
── Because he was tired. ✅
── Since he was tired. ❌
since が示すのは、話し手と聞き手のあいだで すでに了解されている理由。
だからこそ、Why …? が求める「新しい情報としての理由」にはなれないのですね。
「理由そのものを、新情報として差し出せる」── これは because に固有の力 だと言えます。
✏️ ためしに、見分けてみましょう
次の3文の because は、どの型でしょうか。
① The train was late because heavy snow had blocked the tracks.
② You must be tired, because you’ve been working since six.
③ Do you have a minute? Because I need your advice.
【答え】
① 🔵 第1の型(なぜ、そうなったのか)
大雪が、電車の遅延を実際に引き起こしています。
② 🟠 第2の型(なぜ、そう言えるのか)
6時から働いていることが、疲労の原因であると同時に、話し手が「疲れているはずだ」と判断した根拠になっています。must が現れているのも目印ですね。
③ 🟣 第3の型(なぜ、それを言うのか)
助言が必要なことは、相手に時間があるかどうかとは無関係です。理由づけられているのは、この質問をしたことそのもの。
まとめ ── 一語の背景を知ると、世界の「見え方」が変わる
これまでの内容を、一枚に整理してみます。
| 🔵 なぜ、そうなったのか | 🟠 なぜ、そう言えるのか | 🟣 なぜ、それを言うのか | |
|---|---|---|---|
| 理由づけるもの | 出来事 | 話し手の判断 | 発話という行為 |
| 結ぶもの | 出来事と出来事 | 根拠と結論 | 発話とその動機 |
| 答える問い | Why …? | How do you know? | Why do you say that? |
| 訳の目安 | 〜ので/〜だから | 〜のだから | というのも〜だから |
| 文の中/外 | 中(コンマなしも可) | 外(コンマ必要) | 外(コンマ必要) |
| 否定が届くか | 届く | 届かない | 届かない |
🔵 なぜ、そうなったのか
出来事と出来事を結ぶ/「〜ので」
→ Why …? に答える
→ 文の中。否定が届く
🟠 なぜ、そう言えるのか
根拠と結論を結ぶ/「〜のだから」
→ How do you know? に答える
→ 文の外。否定は届かない
🟣 なぜ、それを言うのか
発話とその動機を結ぶ/「というのも〜だから」
→ Why do you say that? に答える
→ 文の外。否定は届かない
最後に、出発点に戻ってみましょう。
because は、語源のうえでは 「その原因によって」 としか言っていませんでした。
何の原因なのかを、指定していなかった。
その 空白 を、世界が埋めれば 🔵 に。
話し手の推論が埋めれば 🟠 に。
発話という行為が埋めれば、🟣 になる。
3つの because があるのではありません。
ひとつの because が、3つの高さで働いている ── そう捉えるのが、本来の発想と言えそうです。



次に because に出会ったら、
「これは、どの高さの because だろう」と
問いかけてみてください。
📚 補足:この3分類について
本記事の3分類は、言語学者 Eve Sweetser が From Etymology to Pragmatics(1990)で示した、内容領域・認識領域・発話行為領域 という3つの領域の区別にもとづいています。
接続詞や法助動詞といった語が、同じ形のまま「世界の中の関係」「話し手の推論」「発話という行為」の3つの高さで働く ── という考え方で、because 以外にも広く応用できる枠組みです。
なお、第2の型に must や can’t が現れやすいという話は、法助動詞が表わす「可能性」の議論と深くつながっています。
同じ語が「現実世界の話」と「話し手の判断の話」の両方で使われるという点で、まさに地続きのテーマです。
あわせてお読みいただくと、より立体的に見えてくるはずです。


それでは、また次回の記事でお会いしましょう。
貴重な時間を使い、
記事を読んでいただきありがとうございました。