本日取り上げるテーマは、
推量を表わす will と must の違い です。
どちらも推量/推定の意味を表わすため、使い分けに迷いやすい2語ですね。
たとえば、
同僚のジョンを訪ねてオフィスへ向かう状況にて、次のような文章があります。
John will be in his office now. Yes, the lights are on, so he must be there. (cf. Palmer 1990: 58)
同じ場面でも、前半と後半で用いられる助動詞が切り替わります。
その分かれ目は、どこにあるのでしょうか。
RIN今回は、この2語をわける ひとつの基準 を読み解いていきましょう。
・will と must、それぞれの「確信のよりどころ」とは何か?
では、いきましょう!
must ──「(証拠があるから)~に違いない」
推量の must は、目の前に 明らかな証拠 があるときに用いられます。
その証拠から、たどり着く答えが一つしかない ── そんなときの「~に違いない」です。
must =「目の前の証拠から導く “~に違いない”」
たとえば、
The lights are on, so he must be there.
(電気がついている。だから彼はそこにいるに違いない。)
根拠は「電気がついている」という、いま観察できる事実。
そこから導ける結論は、とりわけ確信度が高いものとなります。
状況証拠に基づく推定が、mustによって表される確信度が非常に高いとされる所以ですね。
mustが確信度の高い表現であることの別の根拠
基本的に、証拠を出発点にする must は、まだ証拠の存在しない未来の予測には、原則として使えません。
◯ He must be home by now.(今の状態への推論)
✕ He must arrive tomorrow.(未来予測には不向き/「~しなければ」の意味に傾く)
◯ It must be raining outside.(例えば、地下にいるとき、通りかかった人の傘が濡れているのを見て下す推論)
✕ It must rain tomorrow.
また、法助動詞には must や will 以外にも shall・may・can がありますが、
未来の出来事に用いられないとされるのは、 must のみです。
ここからも、must が表わす確信度の高さがうかがえます。
will ──「(既存知識をもとに)〜であるなら、〜だろう」
will は実世界にある証拠ではなく、
その対象について 以前から知っていること(習慣・背景) を根拠に予測することができます。
will =「既有知識から導く “〜だろう”」
John will be in his office now.
(ジョンは今ごろオフィスにいるだろう。)
根拠は、ジョンの勤務時間などの「頭の中の知識」。
実際にオフィスを覗いて確かめたわけではありません。
決定的な対比 ── will と must が並ぶとき
両者の違いがもっとも鮮やかに出るのが、最初に挙げた例文です。
John will be in his office now. Yes, the lights are on, so he must be there.
(ジョンは今ごろオフィスにいるだろう。──ああ、電気がついている。だから中にいるに違いない。)
🔵 前半 will … 来る前の予測。根拠はジョンに関する 既有知識。
🟠 後半 must … 電気という 目の前の証拠 を得たうえでの結論。
証拠を手にした瞬間、助動詞が will から must へ乗り換わる。
この一語の切り替わりこそ、二語の役割分担そのものです。
| 🔵 will | 🟠 must | |
|---|---|---|
| 確信のよりどころ | 既有知識・見通し | 目の前の証拠 |
| 気持ち | 〜なら、〜だろう | ~に違いない |
| 未来の出来事 | 使える | 原則、使えない |
🔵 will
既有知識から「〜なら、〜だろう」/未来にも使える
🟠 must
目の前の証拠から「~に違いない」/未来には使えない



どちらも確信は強いんです。でも、その確信が 「証拠」から来るのか、「知識」から来るのか ── そこが分かれ目なんですね。
📘 認識的モダリティ
言語学では、話し手の判断を表す助動詞を、おおまかに次の3つに整理することがあります(Palmer)。
・may … 「〜かもしれない」(50%50%の可能性)
・will … 「〜なら、〜だろう」
・must … 「(証拠からして)〜に違いない」
will と must はともに 確信の高い側。両者を分けるのは確信の強弱ではなく、その確信の “よりどころ” なのです。
まとめ ── 確信の「よりどころ」で使い分ける
🟠 must …「目の前の証拠」から「~に違いない」。だから未来予測には原則使えない。
🔵 will …「既有知識」から「〜なら、〜だろう」。未来にも自然に使える。
証拠を得た瞬間に will → must へ。
一語の選択に、話し手が “どこから確信を得たか” が表れているのです。



「〜だろう」と「〜に違いない」──根拠の違いに目を向けると、ぐっと使い分けが見えてきますね。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう。
貴重な時間を使い、
記事を読んでいただきありがとうございました。