RiskとCrisisの違いについて - College of Risk Management より

    RIN

    こんにちは。
    RINです。

    本日取り上げるテーマは、
    Risk と Crisis、2つの英単語の意味の違いです。


    さっそくですが、ひとつ質問です。

    🚢「危機管理」を英語にしてください。

    皆さんなら、どちらの表現を選びますか?

    A. Crisis Management
    B. Risk Management

    「危機」=「Crisis」だから、当然 A だと思った方も多いのではないでしょうか。

    ところが――実際に日本の大学に存在する「危機管理学部」の英語名は、College of Risk Management とされているのです。

    「危機」なのに、なぜ“Crisis” ではなく “Risk” なのか。
    実はここに、よく似た2つの英単語、RiskCrisis の本質的な違い、そして両者の関係性が隠れています。

    RIN

    今回は、この2語の意味の違いを、
    語源にまでさかのぼって読み解いていきましょう。

    この記事を読み終わる頃には、次の2つの疑問が明らかになります。

    Risk と Crisis、それぞれが指す意味の違いとは何か?
    ・なぜ「危機管理学部」は Crisis ではなく Risk と訳されるのか?

    では、いきましょう!

    目次

    まずは “Risk” の意味から

    次の3つの文から、リスクが表わす意味の共通点はどのようなものでしょうか。

    ・雨の日に外で遊ぶのは、かぜをひく リスク がある。
    ・十分に水分を取らないと、熱中症の リスク がある。
    ・気候変動によって、異常気象が頻発する リスク がある。

    これら3つの文に共通しているのは、いずれも 「まだ起きていないこと」 を語っている点です。

    たとえば、お医者に「あなたは風邪のリスクがある」と診断された場合、
    当然、「今は風邪ではない」ということです。

    つまり、

    Risk =「まだ起きていない、危険の “可能性“」

    ということになります。

    なぜ Risk は “可能性” を表すのか ── 語源は「航海の世界」

    ここで少し、語源の話に踏み込んでみましょう。

    実は、Risk という言葉のルーツは、意外なことに 「航海の世界」 にあると言われています。

    🌊 古代の船乗りたちが最も恐れていたものがヒントです。

    それは、海面下に潜む “見えない岩礁(rhiza)” でした。
    (諸説あり)

    RIN

    Risk の語源を追っていくと、
    意外な意味の変遷が見えてきます。

    スクロールできます
    ことばの変遷言語単語意味
    1古代ギリシャ語rhiza岩礁/船からは見えない障害物
    2ラテン語risicum損失の可能性
    3イタリア語riscare勇気を持って試みる
    4英語Risk挑戦の中で直面する障害の “可能性”

    rhiza(古代ギリシャ語:岩礁)

    risicum(ラテン語:損失の可能性)

    riscare(イタリア語:勇気を持って試みる)

    Risk(英語:挑戦に伴う障害の可能性)

    特に注目したいのは、3段階目のイタリア語 riscare「勇気を持って試みる」 という意味が宿っていることです。
    Riskとは、ただ「危険」を意味する言葉ではないということですね。

    見えない岩礁が、この先に潜んでいるかもしれない。
    それでも、船は前に進んでいく

    そんな 「挑戦」と「未知の可能性」 が、この単語のなかには折り重なっているわけですね。

    だからこそ Risk は、「まだ起きていない」危険の可能性という、未来に開かれた意味を持つのです。

    では “Crisis” はどんな意味?

    それでは、もう一方の Crisis はどうでしょうか。

    Risk が「まだ起きていない」可能性を指すのに対して、Crisisその対極にあります。

    Crisis =「すでに起きてしまった非常事態」

    先ほどの航海のたとえで言えば――

    Risk は、「岩礁があるかもしれない」と海図を眺めている段階
    Crisis は、「ガリッ!」と船底をぶつけてしまったその瞬間

    Screenshot

    両者を分けるのは、「時間軸」 なのです。

    スクロールできます
    🔵 Risk(リスク)🟠 Crisis(クライシス)
    意味まだ起きていない
    危険の “可能性”
    すでに起きてしまった
    非常事態
    時期(主に)未来のこと
    (予測・想定)
    (主に)現在進行中
    またはすでに発生

    🔵 Risk
    (主に)まだ起きていない危険の可能性
    (未来=予測・想定)

    🟠 Crisis
    (主に)すでに起きてしまった非常事態
    (現在進行中・発生済み)

    実際の英語でも、

    riskは、crisisよりも、willなどの未来を表わす表現と共に用いられることが多いです。

    RIN

    こうして並べてみると、
    「危険」という日本語のなかにくくられている2つの英単語が、
    まったく異なる時間を指していることが見えてきます。

    Risk Management と Crisis Management の違いは?

    ここで、それぞれの「マネジメント」を考えてみましょう。

    🚢 Risk ManagementCrisis Management の違いは何でしょうか?

    ・🔵 Risk Management「事前対策」(岩礁にぶつかる前に、避ける)
    ・🟠 Crisis Management「事後対策」(ぶつかってしまった後、どう対応するか)

    Screenshot

    時間軸で整理すると、答えはシンプルに見えます。

    Screenshot

    ――しかし、ここで終わってしまうと、冒頭の謎は解けないままです。

    「危機」と訳されるのが Crisis なら、なぜ「危機管理学部」は Crisis Management ではなく Risk Management なのでしょうか。

    実はその答えは、この2つの関係性のなかにあります。

    Crisis Management は Risk Management の一部である

    ここがいちばんの肝心なところです。

    Risk Management と Crisis Management は、並列の関係ではありません

    Crisis Management(事後対策)は、
    Risk Management(事前対策)のなかに含まれている

    ――そう捉えるのが、本来の発想と言えます。

    Screenshot

    「もし危機が起きてしまったら、どう対応するか」
    ――そのプランをあらかじめ考えておくこと自体が
    すでに 「事前対策(Risk Management)」の一部 なのです。

    RIN

    事後の動きを「事後に考える」のでは遅い。
    事後の対応すらも、起きる前から備えておく

    それが、本当の意味での Risk Management の姿なのです。

    なぜ「危機管理学部」は Risk Management なのか

    ここまで来て、ようやく冒頭の謎が解けます。

    「危機管理学部」が College of Risk Management と訳されている理由――
    それは単に「事前対策の方が大切だから」ではありません。

    危機が起きないように備えること(Risk Management)も、
    危機が起きてしまったときに対応すること(Crisis Management)も、
    すべては “事前に考え、備える” という
    Risk の枠組みのなかにある。

    そんな思想が、この英語名には込められていると考えることができます。

    「危機」という日本語に Risk という訳語をあてた瞬間に、扱う領域が一気に広がる。
    事後対応の専門家を育てる学部、ではなく、起きる前のすべてに備える ための学問領域である――そう宣言しているわけですね。

    まとめ ── 一語の背景を知ると、世界の「見え方」が変わる

    これまでを踏まえると、Risk と Crisis の関係は次のように整理できます。

    スクロールできます
    表現意味時期マネジメント
    Riskまだ起きていない危険の可能性未来(予測)事前対策
    Crisisすでに起きてしまった非常事態現在進行中/発生済み事後対策

    Risk → 未来の可能性(事前対策)
    Crisis → 起きた非常事態(事後対策)

    そして、
    Crisis Management は Risk Management の一部とも考えられる

    「危険/危機」という日本語ひとつのなかに、英語では時間軸の異なる2つの世界が広がっている。
    そして、そのうちの一方(事後対応)すらも、もう一方(事前対策)の懐に抱かれている――

    そう知るだけで、ニュースで見かける “risk” や “crisis” という単語の見え方が、少しだけ立体的になるのではないでしょうか。

    RIN

    One Word, One World.
    一語にして、世界の「見え方」は変わるということですね。

    それでは、また次回の記事でお会いしましょう。

    貴重な時間を使い、
    記事を読んでいただきありがとうございました。

    よかったらシェアしてね!
    • URLをコピーしました!
    目次